湊かなえ著「母性」を読んで思う〜私的な書評〜




私は本の虫だ。小さい頃から本が大好きで、学校では図書館に通い詰めだった。

結婚前は、親の転勤や自身の転居の多さも伴って、さまざまな地域に住んでいた。新しい街に住む度に一番最初に探すのは図書館で、自分の好きな作家やジャンルの本を読み漁り、もう読めるものがなくなったら古書や新書を求めて書店に買いに行くが常だった。

最近は電子書籍も増えてきているが、できれば紙ベースで本を読みたい。本の匂いを嗅ぎながら。

湊かなえ著「母性」を読んで〜私的な書評〜

ミステリーの本は大好きでよく読む。これまでにもたくさんの本を読んできたが、本の途中で最後の結末を見てしまったのは、これが初めてだと思う。

理由は怖かったから。

「母性」は、母の手記と娘の回想をメインに物語が進む、母と娘のミステリー小説だ。ある事件が起こり、それにいたるまでの経過を遡って、母と娘のその時々の出来事の思いを同じ時系列で交互に語っていく。

母と娘は同じ出来事を一緒に経験しているのにもかかわらず、全く別の思いや感情、感想を抱いている。そのため一緒に喜びを分かち合う、または理解し合うことができず、お互い大切な存在でありながらも、すれ違いが生じていく。

このすれ違いが本当に怖かった。少しずつの感情のズレや誤解で、母と娘は取り返しがつかないところまでそれぞれ追い詰められていく。このまま進んでいけば確実に誰も幸せにはなれない。追い詰められた娘はどうなってしまうのか。そして、家族は崩壊してしまうのか。

怖くて不安で夜眠れそうになく、だからって徹夜で一気に読むこともできず、「あー結末見るって反則だな。でも本気で眠れない」と思い最後のページをめくってしまった。

この小説は、母とは?娘とは?母性とは?家族とは?とたくさんの疑問を投げかけてくる。私はこの小説一つで、私と母についてや私と子供について、また人との関わりについて深く考えさせられた。

相手への想い、自分の思い、お互いの関係性が少しずつずれていき、少しずつ腑に落ちなく、少しずつ不満がたまる。私はあなたのことをこんなにも考えているのに何故あなたはそれを喜びとして受け止めてくれないの?

お互いへの想いや依存が強ければ強いほど、このズレが理由で取り返しのつかない大変なことが起こってしまうのかもしれない。

私にも小さな子どもがいる。

私は元来、子どもが大好きなタイプでも母性溢れる性格でもなかった。でも、子どもが私たちのところに生まれてくれ、一緒に過ごすことにより、徐々に母性が生まれ徐々に母親になっていったと思う。

子どもと過ごす時間が長くなればなるほど、どうしようもなく愛おしく、10年一緒にいる夫には申し訳ないが、まだたった数年間一緒にいるだけの子どものほうが、すでに私の中で世界一大切な存在になってしまっている。

この「大切だ」という想いが強くなりすぎて、愛情が依存にならないよう。相手を想ってしたことが、相手にとっても最善のもので喜ぶはずだと勘違いをしないよう。子どもとの関係を、家族との関係を、この小説によってあらためて見つめ直せたように思う。




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